Lazy Bear

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ザ・ファイター

ミッキー・ウォードは幼い頃より兄のディッキーの指導を受け、プロボクサーとして活躍していた。しかし試合は決して芳しいものではなく、いつも兄と母を始めとする家族に振り回されていて、自分の意見は何一つ尊重されていなかった。
そんな中、無茶なマッチメイクのせいで怪我を負ったミッキーは、ある一つの決断をする。

主演はマーク・ウォールバーグ、助演としてクリスチャン・ベイル。
実在するボクサー、ミッキー・ウォードの反省を描いたボクシング映画です。ただ、試合よりもミッキーの半生そのものに視点が置かれているため、比較的人間ドラマに近いように思います。

ミッキーの家族は貧しく、しかもちょっと狂気を感じる異様な雰囲気があります。ミッキーはそれにいつも振り回されているようで、自分の意見が尊重されない事に不満を覚えているように見えました。兄ディッキーは脳天気でお調子者でヤク中、ミッキーのトレーナーであるはずがろくに練習もしないので、非常に足を引っ張っています。

この兄役のクリスチャン・ベイルがとにかく凄かった。ミッキーが寡黙な性格であるのか、あまり喋らず自己主張もしないため、余計にディッキーが目立ちます。クリスチャン・ベイルの出演映画はほぼ見ているけれど、これだけはっちゃけているのは類を見ません。正直やり過ぎだろと思ったものの、スタッフロールで本人が登場し全くそのままのはしゃぎ方をするから、これはクリスチャン・ベイルは忠実に再現したのだと非常に驚き苦笑いさせられました。
また、事あるごとに口癖のように「かつて俺はあの云々」と言っていたのが、最後にはがらりと言葉を変えて否定に近い事を言い出したのが印象に残っています。ああディッキーは本当に立ち直ったのだ、とその時にようやく実感し、なんだか感動してしまいました。

ミッキーの葛藤や、母親の狂気じみた執着心、恋人シャーリーンのミッキーとミッキーの家族に対する愛憎、とにかく様々な心理描写があって、非常に複雑な気持ちが絡み合ってバランスを保っているのだと良く魅せてくれます。この演出が巧みで見応えがありました。こういう心理描写が下地にあってこそ、ボクシングの試合でのカタルシスが映えて来るのでしょう。

オススメ度は4+。お約束なサクセスストーリーではあるものの、重厚な心理描写からつい見入ってしまう面白さがあります。
アカデミー賞等の各賞では助演賞しか受賞出来なかったけれど、ノミネートされただけの面白さは充分にあります。

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