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青年はふと目覚めると、そこは病院の一室だった。

何故自分はこんな所に?

青年は、そんな質問にすら答えられなかった。

そう、記憶というものを失っていたのである。

思い出せるのは、知識的なものばかり。

個人の歴史、いや、その人間を形成する要素と言ってもいい、自分の過去の記憶だけが、すっぽりと抜け落ちていた。

自分の所在を失った不安感。

恐怖。

途方もない喪失感。

周囲の人間の記憶と、過去の自分が残した足跡を辿りながら、青年は自分を捜し始める。

しかし、全ての手がかりが、既に誰かに変えられていたものだとしたら。

彼が辿るのは、果たして自分で切り開いた道なのか、それとも他人のシナリオなのか。





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