Lazy Bear

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出口のない海

1945年、戦争末期の日本はもはや敗北寸前だった。
この苦境を盛り返すべく、海軍は潜水艦型魚雷『回天』を開発。この特攻兵器で米英連合軍の撃破を試みる。

太平洋上を潜行する一隻の潜水艦。この潜水艦には『回天』4隻と特攻志願兵4名が乗り込み、連合軍艦隊を打ち落とす作戦を今正に遂行中だった。


11代目市川海老蔵が主演で話題となったこの映画。作中の『回天』とは架空の兵器ではなく、実際に存在した旧日本軍の特攻兵器です。

戦争末期、もはや勝利の見込めない戦況の中、様々な思いを抱えながら特攻兵器に乗り込む若い海兵達。回天は特攻兵器であり、一度出撃すれば二度と生きては帰れない事を知っていながらも、日本の勝利を信じて彼らは日々訓練に勤しむ訳ですが。

主な視点は主人公である並木少尉で進んでいきます。並木は甲子園の優勝投手で、大学進学後も野球を片時も忘れたことの無い野球人間です。そんな彼がどうして回天に乗り込んだのか、というのが見せ所の一つとなるはずですが、どういう訳かこの部分に限らず並木の心情はほとんど描写されていません。
友人や家族との対話で本人の心情らしい言葉は出てくるけれど、それは死を恐れるどころかむしろ自ら望んでいるような感すらあります。それなのに、いざ出撃する時は急に死を恐れる態度を取ったり、とにかく一貫性が無い。確かに当時の情勢やら価値観からすれば、当然の事かもしれないけれど、もっと並木の心情や目的や意思を明確に表しておくべきだったと思います。そして、並木のいい加減な人物像にも拘らずどうでもいい安っぽい演出が多々あり、スクリーンから何度も引き剥がされました。

総評とすれば、これは事実を基にした悲劇的なエンターテイメントの一つにしか過ぎません。『回天』とは一体何だったのか、ただの特攻兵器だったのか、乗り込む人間は何を思い考えていたのか、作品の根幹となるべき部分がことごとく蔑ろになっていました。戦争をテーマにした映画を撮るならば、当時の情勢を完全に明確化しないまでも臨場感や現実味は特に大事にするべきです。正直なところ、このレベルの脚本であるなら『回天』の部分を別な何かと取り替えても違和感がありません。

オススメ度は3+。役者陣の好演も虚しく、演出と脚本がどうしようもなくテンプレートです。可もなく不可もなく、とりあえず傷心的になりたいならおすすめします。ここ近年の戦争映画の中では比較的マシだというレベル。タイトルだけは秀逸だと思いました。

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