Lazy Bear

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藁の楯

「清丸国秀を殺害した者に10億円を支払う」そんなセンセーショナルな広告記事が、ある日新聞各社に一斉に掲載された。依頼主は蜷川隆興という経済界の大物で、現在逃亡中の清丸国秀に7歳になる孫娘を惨殺されていた。
身の危険を感じた清丸は福岡警察署に出頭、早速送検するために警視庁へ移送する事になる。その護衛につくのは銘苅以下5名の警察官。たとえ未遂でも1億円の報酬が得られる事が分かり、銘苅達は最新の注意を払いながら移送任務に着く。だが、あまりに危険な任務にも関わらず、警護対象である清丸は、あまりに非人道的でクズとしか言い様のない人間だった。


監督は三池崇史。主演は大沢たかお。共演として松嶋菜々子。
人間のクズとしか言い様のない人物を命がけで護送する警察官のお話。監督が三池崇史という事だけあって、暴力描写はかなり容赦の無い内容でした。
主人公である銘苅は、命令であればどんな人物であろうと警護するという、正義感あふれる仕事人間。対する周囲は、ほぼ「別にこんな奴死んでもいいや」ぐらいの感じで、時折煽りを入れてくる清丸に対してかなり露骨に敵意を抱いています。この清丸という人間は本当に同情の余地が一片も無い人物だけに、これは主人公との対比が一つのテーマなのかなと最初は思っていました。ところが案外そう安易なものではなく、冒頭のシーンと、寡黙で私情を口にしない銘苅がどうして仕事に対して真面目なのかが示されるクライマックスで、ようやくその全貌が明らかになります。これは、孫を惨殺された蜷川隆興との対比なのだなと感じました。
この特殊な状況のため、スクリーンに映る人物はほとんど清丸を狙っていてもおかしくないという、本当に異様な雰囲気でした。ただ、本当に義憤に駆られて行動しているのが1人しかいないのが、逆に人間のエゴが剥き出しになっている印象を受けます。
俳優陣について、主演の大沢たかおは本当に凄い演技でした。つまらない淡々とした仕事人間かと思えばそうではなく、本当にあの鬼気迫った変貌ぶりはリアルな凄みを感じさせます。反対に、清丸役の藤原竜也はイマイチでした。前から思ってる事だけど、怒鳴り散らす以外の演技が完全に大根なので、凄く秀逸な煽り文句を言ってるシーンや、観ていてコイツは殺すしかないと思わせるシーンなど、どれもイマイチでした。もっと別な、嫌味な弁の立つタイプの俳優の方が適任だと思います。

オススメ度は5。ただただ圧倒される緊迫した作品でした。決して愉快な展開ではないし、終わりも人によってはしっくりこないかも知れません。ただ、妙に生々しい人間描写は流石の監督らしい内容なので、観て後悔する事は無いはずです。

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