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ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

ピシンは、インドのフランス領で生まれ育った聡明な少年だった。ピシンという名前でイジメられるため、パイという通称を名乗り、延々と円周率、即ち「π」を諳んじる事が出来る特技を持っていた。
生家は動物園を営んでいたが、領土のインド返還を機に補助金が打ち切られるため、家族でカナダへ移民する事になる。しかし、家族と動物達の乗る船は航行中に事故で沈没してしまった。
這々の体で救命ボートで逃げ出したパイ、家族は皆死んでしまい、ボートに残っていたのは骨折したシマウマ、バナナに乗って流れ着いたオランウータン、気が立っているハイエナ、そしてベンガルトラだった。


監督はアン・リー。世界的なベストセラー小説を映画化した3D作品です。
ベンガルトラと227日間も漂流して奇跡的に生還した、少年パイの物語。話は大人になったパイが、カナダ人の小説家との対談で過去を振り返る回想形式で進んでいきます。
序盤はパイが学校でイジメられながらも、円周率の伝説や恋人が出来るもののカナダへ移る事になるまでの話。それから船が転覆し、ようやく本編に入るというやや遅い導入でした。
シマウマ、オランウータン、ハイエナは皆死んでしまい、パイはベンガルトラのリチャード・パーカーとの二人きりで大海原を漂う事になります。当然、リチャードは虎であるため、パイを餌としか思っておらず、序盤はパイとリチャードの攻防となりました。しかし、食料や飲水の問題が深刻化してくると、両者は共に奇妙な歩み寄りを始めていきます。それは、単にパイが餓死よりも身近な死の危機が迫っているためなのか、本当に和解出来ると考え始めたのか、リチャードはパイと協力しなければ生き延びれないと思ったのか、意外とあれこれ考えさせられる距離感でした。”虎と居たからこそ生き延びれた”のか”虎と居たにも関わらず生き延びれた”のか、どちらにも捉えられる不思議な関係です。
そんな二人が辿り着く結末は、序盤にパイの父親が「リチャードはお前を友達と思っていない」という言葉がひしひしと思い出されるものでした。そして更に、この冒険譚が文字通りのものとは限らない匂わせ方があり、本当に解釈次第では二転三転しそうな終わり方でした。
3D作品という事もあって、映像美へのこだわりは確かに凄まじいものがありました。けれど、それ以上にただの漂流からの生還した冒険ものでは無い、宗教観も入り交えた話の構成はただただ感嘆するばかりです。これは想像以上に深い物語でした。

オススメ度は5。予告編の内容に違いはないけれど、それ以上に深いお話です。やや生死観のキツイ作品ではあるけれど、見応えは期待以上のものです。3D作品としてもかなりオススメの一本です。

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