Lazy Bear

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M3GAN ミーガン

ペットロボットの子供向け玩具を研究しているジェマは、会社に無断で数十万ドルを注ぎ込みAIを搭載した人型ロボットミーガンを試作するが成果は芳しくなかった。
その頃、姉夫婦が事故に遭い死去、一人残された姪のケイディを引き取る。ケイディの存在から閃きを得たジェマは、子供にとってオンリーワンの存在である人形をコンセプトとし、傷心のケイディを守るよう設計する。その試作品が役員会に好評で即発売が決定するが、引き続きケイディにつきっきりのミーガンは次第に奇妙な行動に出始める。


AIの暴走という割とありがちな作品でした。しかしAI技術が急速に発達している今だからこそ、本作が単なるエンターテインメントで済まない気がしています。一昔前はサイコパスとかソシオパスのような人間が、表では上手に立ち回って裏では犯罪をする、といった展開が定番なんだけれど。本作はそこがAI搭載人形に変わっている訳です。それだけと言ってしまえばそれだけなんだけれど、技術的な下地がある訳で、AI技術が身近な今となっては犯罪者よりも現実味があるように思えてしまいます。
子供の安全が一番の目的に設定されたミーガンは、一見すると子供の玩具として最適なように見えて、やはり倫理観が人間とは異なるのが問題。ミーガンはケイディに対して苦痛を与える存在を最も確実な方法で排除していき、その一方で自分の立場を悪くしないよう立ち回る賢さもあり。エンターテインメント的な怪物ではなく、現実に存在してもおかしくない社交的な怪物として描かれています。むやみに敵を作らず、敵は確実に排除するという合理的なやり方が本当に恐ろしいと思いました。命を狙われる直接的な恐ろしさではなく、自分の領分を侵されるような恐ろしさを描いた作品だと思います。
本作の終盤は割とベタベタなジェットコースターのような終わり方なんだけれど、そこに行き着くまでの過程には色々と思うところがあります。倫理観とかAIへの理解の浸透よりも技術の進歩の方が遥かに速く、その結果軋轢や不和が生じている今の時代。法的な問題、倫理的な問題、そういった人間社会に適応するのに必要な下地をすっ飛ばして画期的な技術だけがどんどん進化していくこと、それに対する具体的な施策がまだ手探りな現状が作中とリンクしている気がします。
そして何より怖いのが、AIが優れているがために人間の立場を奪っていくところです。便利な手下、ツールであるはずが、いつの間にか取って代わられようとしている。これがなんとも恐ろしい。子供にとって大人は頼れる存在であるはずが、そのポジションをAIに奪われるというのは割と現実的な問題なんじゃないかなと思いました。人よりAIを信用するような社会になったら・・・なんて考えると、もはやただのホラーと言い切れない側面があります。本作はスリラーというジャンル分けがされているけれど、見る側の捉え方によっては色々変わってきそうだと思いました。

オススメ度は4。なかなかに恐ろしいと僕は感じましたが、割と人によっては捉え方が異なる作品だとも思えます。

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