Lazy Bear

Categories

Archive

Site search

Feeds

Meta

グラン・トリノ

朝鮮戦争に従軍後、フォード社に勤め、現在は年金暮らしのウォルト。彼は妻に先立たれ、自宅で愛犬のデイジーと暮らしていた。
息子達とは微妙な確執があり、孫達とも打ち解ける事は無かったウォルト。自宅の付近には東洋系の人間ばかりが住み、態度を硬化させるウォルトは孤独な生活を送っていた。
ある日、隣の家に住むタオは従兄弟のマフィアにそそのかされ、ウォルトが所有する名車「グラン・トリノ」を盗もうとする。寸出のところでそれを防いだウォルトだったが、それを切っ掛けに今まで自分が拒絶してきた東洋人達との関係を始めるようになる。

主演、監督はクリント・イーストウッド。イーストウッドは本作で俳優業を引退し、以後は監督に専念するそうです。つまりは引退作という位置づけになるでしょう。

物語のテーマとして、アメリカの他民族国家の暗い部分を描くという事と僕は思いました。イーストウッド演ずるウォルトは昔堅気のアメリカ人という印象で、口は悪く東洋人や黒人といったほかの民族に対して排他的な人間です。そんな彼がタオという東洋人の少年と徐々に距離を詰めていく、そして周囲の東洋人ファミリーとも交流を進めていく、そういった過程に見入っていました。
中盤からクライマックスにかけて、非常に話が重苦しいものになっていきます。ウォルトは劇中でしばしば新米神父と生死観について話すのですが、ウォルトの言葉はどれも非常に重みのあるものでした。従軍経験があり、その当時の記憶をずっと引き摺っている。なんとなくそんな感じがします。けれど、そんなウォルトに何度も何度も拒絶されても対話を試みようとする神父が印象的でした。

イーストウッドの演技は見納めということでしたが、確かにピークは過ぎたなあという印象はあります。ただ、それがかえって気難しい頑固な主人公にうまくマッチしているとも思いました。他の出演者は無名な役者ばかりでしたが、特にタオ役のビー・ヴァンのどん臭い少年の演技は非常に面白かったです。この二人と、タオの姉と、それらの掛け合いは秀逸です。一番の見所はここかもしれません。

オススメ度は5−。全体的に重苦しく、見終わった後も決して愉快な気分にはなれません。しかし、重いテーマの分、見応えは非常にあります。また、イーストウッドの俳優としての仕事はこれで最後になるため、ファンならば必見でしょう。

Write a comment