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十三人の刺客

明石藩藩主、松平斉韶は生来の残虐な性格故に、日々民衆を虐殺しては楽しむという暴君だった。事を重く見た家老の間宮図書は、斉韶へ上申するべく切腹する。しかし事は公にされず、斉韶も自分の行動について省みる事をしなかった。そればかりか、事情を知らない将軍は斉韶を老中とする沙汰を出す。そこで老中土井利位は、斉韶の暗殺を決意する。

監督は三池崇史、主演は役所広司。その他有名俳優が多数出演しています。
60年代の同名の映画のリメイクだそうです。原作は観ていません。

実在の人物や史実をモチーフにした時代劇アクションもの。エンターテイメント系かと思っていたけれど、意外としっかりとした土台になっていて、序盤は普通に時代劇をしていました。ただ、暗殺の標的である斉韶の設定が設定だけに、かなりキツイ描写も無くはありません。年齢制限はあるものの、大人でもこれはかなり心に来るんじゃないかなと思いました。それだけに、「斉韶、許すまじ!」という思いを盛り上げてくれます。

ラスト50分のアクションをやたら宣伝してましたが、正直50分は長過ぎないか?と思っていたけれど、意外と時間は早く感じました。やはりそれまでの積み重ねがあるせいか、ある種のカタルシスさえ感じる13人対200人の一大決戦は、とにかく手に汗握る攻防の連続です。武士と言えどもろくに真剣を使った事も無いため、宿場を丸ごと改造した工夫を凝らした戦いは見応えがあります。

また、松方弘樹や伊原剛志の殺陣は実に見事でした。時代劇の爽快な殺陣とはまた異なる、純粋に斬り殺すことだけが目的の殺陣というのは最近では珍しいと思います。それだけに、この二人に限らず全ての殺陣は必見です。
皆文字通りの血みどろになって戦う様は、確かに人によっては嫌悪感を持つかも知れません。ただ、何としてでもこの暴君を討ち取らなければ、という島田と、何があろうと主君は必ず守る、という鬼頭の対決、そしてそれぞれの仲間達、その壮絶な最後はとても感慨深く、血がどうとかいうのを忘れてしまうほど熱中させられます。武士道とは何か、登場人物がまたそれぞれ独自の価値観を持ち、決戦に臨んでいるのも一つの見所ではないでしょうか。
個人的に一番の見所は個々の役者の表情だと思います。監督は表情にこだわりがあるのか、どれも印象に残る強烈なものばかりです。その役の生き様を表情一つに込めているのではないか、そんな気がしました。

一つ気になったのは、斉韶役の稲垣吾郎が意外と今ひとつパッとしないこと。確かに頭おかしい振る舞いや、ネジの外れた行動の数々は凄みがあるのだけれど、どうにも迫力が足りないように思います。もっと「こいつは絶対に殺さないと駄目だ!」と思わせるような悪の雰囲気が無いのです。だから残虐な振る舞いをしていても、なんかこう脚本通りにやってます的に見えてしまい、どうにも興ざめしてしまいます。鬼頭役の市村正親に食われている感も否めません。話の目的がこの松平斉韶を暗殺する事なのだから、どういう事をしてるから殺すんじゃなくて、こういう人間だから殺すという所をもっと強調して欲しいと思います。ラスボスが小悪党だとちょっとしらけちゃいますね。

オススメ度は5−。かなり入り込む事の出来る時代劇アクションでした。お勧めできる傑作だと思います。ただし、グロいというよりも心に来るショッキングなシーンもあるので、それなりに覚悟は作っておいた方が良いかと思います。血などは案外大した事はないです。

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