Lazy Bear

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八日目の蝉

希和子は不倫相手の子供を堕胎するも、その時に一生子供を産めない体となってしまう。時を同じくして、不倫相手の妻は妊娠し無事に出産する。この事実に受け入れ難いものを感じた和子は、その赤ちゃんを一目見れば何か納得出来るかと思い不倫相手の自宅へ忍び込むものの、発作的に赤ちゃんを誘拐してしまった。

原作は同名の小説。主演は永作博美と井上真央。永作博美は40代のはずだけど、劇中では妙に若く見えた。これってメイクのおかげ? 元々童顔だったような気もするけど、凄く適役だと思いました。

生まれてから4年間も他人を母親と思って育った主人公の恵理菜と、かつて恵理菜を誘拐して4年間偽の母親となった希和子、両者の視点をスイッチしながら話の焦点を最後に暮らした小豆島へ集めていく構成は非常に面白かったです。多少唐突さ強引さはあったと思うものの、全体として見て流れは良いと思います。

秋山家の抱える様々な問題がどれも生臭い昼ドラで、全編に渡って濃厚な愛憎劇を繰り広げているという印象が強くあります。そんな中で、微笑ましい親子を演ずる希和子と恵理菜(薫)は一服の清涼剤のような感じさえします。冒頭で二人の生活が結局どうなってしまったかは分かるため、尚更悲劇的に思えるのだけれど、そもそも誘拐してきた訳だし、しかしそこにはこういった理由があったりと、意外に人物の関係が複雑で、単に誰が悪かったと言い切れないのが悩ましさを際立たせます。おそらく、誰が悪者でみたいな事を書きたかったお話ではないとは思いますが、どうしても人の粗探しはしたくなってしまいました。

和子パートとは別に、恵理菜パートはどうにも虚無感というか現代的な無気力さが感じられました。正直な所、恵理菜の方の出来栄えは微妙だったように思います。恵理菜という人物像が、まるでモデルでもいるかのように妙に不合理な気がするのは、男性には分からない部分なんだろうか? 何とか過去と今の自分に折り合いをつけたい、という気持ちは分かるけど、その切っ掛けがどうにも良く分からない。これについては、本当に女性でないと分からない感覚なのかもしれません。

とまあ、僕にとっては解り易い和子パートの方が楽しめました。実際少しも笑えない話ではあるんだけれど、きちんと話の抑揚がついていて見応えもありました。それに、意外と良いセリフが多いです。原作からの引用なのかな?

一つ、気になること。井上真央の出ている映画は、そんなに見たわけではないんだけども。なんか、凄い演技が棒のような気がする。こういう役作りだったんだろうか……? せめて、もうちょっと喋りが何とかなればなあ。

おすすめ度は4+。かなり生臭いお話で、とてもハッピーエンドとは縁遠いものです。ありきたりな善悪に一石を投じて色々と考えさせられるような作品を観たい、という方にはオススメだと思います。

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