Lazy Bear

Categories

Archive

Site search

Feeds

Meta

日輪の遺産

太平洋戦争末期、帝国陸軍の参謀を務める真柴少佐は、軍上層部に極秘裏に呼び出される。そこで彼が受けた命令とは、およそ900億円にも登る戦費の隠匿だった。ポツダム宣言を受け、受諾と抗戦に分裂している軍内において、その任務の遂行は非常に困難を極める危険なものだった。

主演は堺雅人。他に中村獅童や八千草薫等が共演しております。
フィリピンでガメたマッカーサーの遺産を日本の復興のために隠してしまおう、作業にはあんまり知恵を回さない女学生を使おう、といった流れが大筋の架空の戦争映画。とは言っても、ドンパチと戦闘が行われる訳ではなく、むしろ戦後処理が重視されている内容です。
基本、邦画の戦争ものはろくなものはないので期待は薄かったけれど、この映画は意外にも脚本がかなり良く出来ていて、架空ながらもかなり説得力のある展開でした。軍人として使命を全うする真柴は、比較的ステレオタイプな戦争映画の主人公像だったものの、影が若干薄かったように思います。むしろ、中村獅童の赤鬼軍曹が濃すぎるせいもあるのだけれど。女学生達と野口先生の構図も、よくある反戦もののそれかと思いきや、きちんと伏線として使われているのには参りました。どうしてこんな重要な任務にこの人選なのか。そんな疑問も回収する話の組み立ては素晴らしいの一言です。

中盤以降まで印象が良かったのだけど、その一方で後半はどうにも邦画特有の可笑しさが出ていました。正直、マッカーサーのくだりからは不要なんじゃないかと思えます。また、いちいち幽霊を出すのも、どうにも。個人的に、「戦争では負けたけど精神論では勝ったぜ!」的なカビの生えた演出が大嫌いなので、いい加減こういった部分から脱却しないものかと切に願います。見ていてどうにも惨めな心境になります。そもそも作中で小泉中尉が言っていた”おぞましいもの”の、それそのものじゃないんでしょうかね。
せっかくずっと説得力を持たせた良い話が続いていたのに、戦後のくだりで一気に台無しにして終わってしまったように思います。ああいうのを入れないと気が済まないというのは、本当に誰向けの判断なのだろうか。

オススメ度は4+。後半はがっつり崩れるものの、戦争関連の映画としてはかなり面白い部類です。多少地味には思うかもしれないけれど、それぞれの立場の入り組みかたを意識すればかなり楽しめる映画だと思います。

Write a comment